年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 だいぶ寛容になって来た世の中と言えど、やはり受けれない人は一定数いるわけで、ジェンダーレスモデルってだけでも変な嫌がらせを受けてしまう事はある。

 もちろん私は2人のことを祝福している。相手の武琉(たける)君は私の一つ年下だけど、凄くしっかりしてそうで、凄くいいコだ。
 当日、私にヘアメイクされる香緒ちゃんは何時になくソワソワしてて、心ここにあらず、って感じだった。長く一緒に仕事をしているのに、そんな香緒ちゃんを見るのは初めてで、幸せなんだなと肌で感じた。

 そして、私はその顔を見て、失恋した気分になった。

 本当に淡い恋心だったんだと思う。

 男の人が苦手で、生まれてこの方誰とも付き合った事の無い私にとって、香緒ちゃんは一番近くにいる男の人だった。
 普段はそう性別を意識する事はない。身近な男の人だから好きになったんじゃなくて、香緒ちゃんだから好きになったんだと思う。
 香緒ちゃんもそうなんだと思う。
たまたま好きになった人が同性だった。それだけだと思う。

 鏡の前に香緒ちゃんを座らせて、髪をとかしながら何となくぼんやりとそんな事を考えていた。
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