年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「モヒートお待たせしました~」

 店員さんが私にグラスを差し出すのとほぼ同時に「斉木といるならいいんだ。じゃ」とその人は言ってビールジョッキを持つと背を向けて去っていった。

「ちょっと! 何いいだすのよ?」

 グラスを持って席に戻りながら健太に抗議すると、「事実を述べただけじゃん」と軽く受け流されてしまう。

「おかえり。大丈夫だった?」

 席に着くなり明日香ちゃんに尋ねられる。

「あ、うん。って言うか、誰かわかんなくって困った」
「だろうねぇ」

 明日香ちゃんは笑いながらそう返す。

「きっとそうだと思って竹内送ったんだよね。アイツ、可愛い子に見境なく声かけるからさ」
「可愛いかは別にして……助かったけど、健太が変なこと言い出したから恥ずかしいよ」
「だから俺は事実を述べただけだって。ま、一緒に風呂に入ったの、たぶん4歳くらいでもう記憶にないけど」
「私も無いから……」

 はぁ、と息を吐いてから私はモヒートに口を付ける。

「そう言えば、さっき竹内と話してたんだけど。咲月の彼氏結構歳上だし、結婚考えてるの?」

 明日香ちゃんは、いつの間にか置かれていた次の料理をお皿に取り分けながら私に尋ねた。
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