年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 もう辺りは薄暗くなっていてギリギリ至近距離なら顔が見える。どちらともなく近づいて、そして少し冷えた唇にお互いの熱を移しあった。感触を確かめるように唇を喰むと、さっちゃんもそれに応えてくれた。

「……暗くなったし、冷えてきたね。車に戻ろうか」
「うん。また、明日ここに寄ってもいい? 朝も綺麗だよ?」

 さっちゃんは両手を引かれながらそう言い、俺は立ち上がったさっちゃんの手を握り答える。

「そうだね。ゆっくり海の色を眺めたいかも」
「きっと、指輪と同じ色だよ?」

 そう言ってさっちゃんは笑った。

 車まで戻り、お互い砂を払ってから乗り込む。もう7時前。駐車場にはなんとか明かりがあるが、そう明るいわけではなかった。

「お母さん達、まだ寝てるかな?」
「どうだろう。でもあんまり寝てなかったみたいだし、もしかしたらそうかもね」

 まだ車のエンジンはかけず、シートベルトもしないままに会話する。

「じゃあ……もうちょっと時間大丈夫かな?」

 外からの灯りでほんのりと照らされたはにかむような顔。

「なんで?」

 さっちゃんのほうを向き、ゆっくりと頭を撫でながら俺は尋ねる。

「もう少しだけ、睦月さんと2人きりでいたいなって」

 俺を見つめるさっちゃんに「本当、可愛い……」と言いながら、深く唇を重ねていた。
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