年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 目の前で、"あの時"と同じように大きな瞳を向けるその顔は、朧げだけど、なんとなく面影はある気がする。

「睦月さん……いったい……どこで見てたの?」

 さっちゃんはきつねにつままれたみたいな表情のまま、俺を見上げている。そんな顔を見て、俺はクスクス笑いながらさっちゃんの頰に手を当てた。

「まだ気づかない?」

 肌の感触を確かめるように撫でながら、俺は尋ねる。

「だって……。信じられなくて」
「だよね。俺も、運命ってあるのかなぁって思ったよ」

 そう言いながら、昔も今も変わらず可愛いと思うその顔に近づき、チュッと音を立てて唇を軽く合わせてから離れる。

「……睦月さんて、困ってる人がいたら手を差し伸べてくれる人なの、昔から変わらないんだね」
「そうかも知れないけど……もしかしたら巡り巡ってさっちゃんにまた出会うためにそうしてたのかもよ?」
「睦月さんは……あの時も、今も、私にとってヒーローだよ? 困ってたらすぐに飛んできてくれるの」

 優しく笑みを浮かべそう言いながら、さっちゃんも俺の頰に手を当てる。

「そう言って貰えて幸せ。俺はこれからずっとさっちゃんだけが特別な人だからね」
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