年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「で? 睦月は?」
「睦月君なら駐車場にいるよ。司は? どっか行くの?」

 香緒ちゃんがそう尋ねると、長門さんは「飯の買い出し」と軽く答えた。

「ふーん。瑤子さんはどうしたの?」
「家だ。別にいいだろ。俺だって一人で買い出しくらい行けるっつーの!」
「へー? 本当に?」

 そんなことを言いながら笑っている香緒ちゃんを見ていて、ふと"みかさん"のことを思い出す。ハリウッド女優の極秘撮影。私はそのヘアメイクを担当させてもらったのだけど、今の長門さんと香緒ちゃんの雰囲気は、その時の2人を思わせた。

「うるせぇ。俺はもう行く。お前らも頑張れよ?」

 長門さんは到着したエレベーターに乗り込みながらヒラヒラと手を振っている。

「うん。じゃあね!」

 長門さんと別れて、台車を押す希海さんのあとに続く。

「司の家はここだ」

 と希海さんに教えられながら進んだ隣の隣の家。そこが昨日見に来たばかりの新居だ。家の鍵を開けて中に入ると、私は一番手前の部屋に向かう。

「さっちゃ~ん! これ、その部屋に入れればいいの~?」

 玄関先から香緒ちゃんの声が聞こえて、私は「お願~い!」と声を張り上げた。
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