年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 ペットボトルを口に運びながら香緒がそう言うのを、少し居た堪れない気持ちになりながらさっちゃんと顔を見合わせた。

「実はお母さんには承諾もらったけど、お父さんには秘密なの。だいたい、来月27になる娘が結婚考えてる人と一緒に住むのダメなんて、考えが古すぎると思わない?」

 さっちゃんがむくれたように香緒に言うと、香緒はそれに圧倒されながら「まぁ、そうかもね」と返していた。
そしてさっちゃんのほうは、相当溜まっていたのか、愚痴を溢すように続けた。

「なのに、変なところで子どもみたいなんだから。今度結婚の挨拶に行くのだって、事前に知らせたら居なくなるかも知れないからって突然行くのよ?」

 そこで、はぁーっと深く溜め息を吐くさっちゃんに、俺以外の3人は目を丸くしている。
 確かに、結婚の挨拶に行くのにアポ無しで訪問なんて聞いたことない。っと言っても、もちろん知らせてないのは学さんにだけで、美紀子さんはもちろん、真琴君にも、そして未だに向こうで暮らし続けてるうちの父にすらいつ行くのかは伝えてあるんだけど。

「……大丈夫? それ?」

 ようやくそう言った香緒に、さっちゃんは得意げに答える。

「とにかく、お父さんを捕まえさえすれば、逃げられないもの! ギプス、まだ外れてなくてよかった」

と。
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