年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 そんな出来事があったなんて知らなかった。確かに明日香ちゃんは進路に悩んでる時期があった。けど、いつの間にかスッキリした顔になっていたのを覚えている。

「そう言えば……そんなこともあったな」

 お父さんは思い出したのか、懐かしそうな顔で明日香ちゃんにそう言った。

「だからね、今も悩むくらいなら進んでみようかなって思って。だから私から言ったの。結婚してって」

 柔かにそう言う明日香ちゃんは、凄く幸せそうで綺麗だった。見てるこっちも幸せな気分になるくらい。

「って、逆プロポーズ? やるなぁ明日香さん! 健太君、もう尻に敷かれる感じかよ~」

 真琴は自分の横に座る健太を、茶化しながら肘で押している。

「本当にな。そんな未来しか見えねーけど、ま、仕方ない。明日香は前からこんなやつだしな」

 開き直るように言う健太の顔は満更でもなさそうだ。けれど、そう言われた明日香ちゃんのほうは顔を真っ赤にしている。

「急に名前で呼ばないでよ! さっきまで斉木だったのに!」

 叫びながらも、とっても可愛いらしい明日香ちゃんに、皆から笑い声が漏れていた。
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