年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「おめでとう、明日香ちゃん、健太君。お幸せに」

 隣で睦月さんが、自分のことのように幸せそうに微笑みながらそう言うと、2人は照れ臭そうに「「ありがとうございます」」と口を揃えた。
 そんな様子を見ながらお母さんは立ち上がると「せっかくだから2人ともご飯食べて行って? 色々とお話し聞きたいわ」と声を掛けた。

「おばさん、いいの? もしかしてお取り込み中だったんじゃ……」
「いいのいいの。ね? さっちゃん。先にご飯にしましょう?手伝ってくれるかしら」

 お母さんは何事もなかったように笑みを浮かべてそう言う。確かにこの雰囲気のなか、さっきの話の続きなどできそうになかった。

「わかった……」

 立ち上がろうとすると、前から「おい。お前」とお父さんの声がする。

「俺、ですか?」

 お父さんが見ていたのは睦月さんで、睦月さんは表情を硬くしてそう答えた。

「車、運転できるか?」
「はい。いつも運転してます」

 その答えを聞くと、お父さんはすぐ近くにあった棚から車の鍵を取り、背中側に置いていた松葉杖を手にした。

「ちょっと顔貸せ」

 眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにそう言うとお父さんは立ち上がった。

「はい」
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