年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 連休の間、2人で探した式場を1日1箇所見学した。でも、見てまわるたび悩む一方だった。元々結婚できるなんて思ってもなかったから、今まで自分の結婚式を想像したことなんてなくて、どこも素敵だな、と思うぶん決め手に欠けていた。

 そして、今日で5箇所目。一応これが最後。と言っても今まで見た中で決めなきゃいけないわけじゃないし、睦月さんも「まぁ、気楽に見に行こうよ」と少し焦り気味の私を落ち着かせるようにそう言った。


「岡田さん。お越し下さりありがとうございます」

 最後の最後に訪れたのは、睦月さんが撮影した式場だった。到着して受付を済ませると、撮影時に担当くれたと言う女性が挨拶しに来てくれた。

「こちらこそ、撮影の時はお世話になりました。今日はよろしくお願いします」

 そう言って会釈をする睦月さんに、その人は明るい笑顔を見せる。

「今回のパンフレット、社内でも評判がとてもいいんです。来シーズンも是非お願いしようと話が上がってるんですよ」
「そうですか。そう言っていただけてホッとしました。あまり手がけたことのない仕事だったので」

 睦月さんは仕事モードの顔つきになると柔かにそう返していた。

「ではご案内いたしますね」

 その女性はそう言って微笑む。会場内の様子を見ると、他の人達は数組に1人案内が付いているようだけど、式場のかたが気を利かせてくれたのか私達だけの案内みたいだ。
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