年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 一緒に暮らし始めて半年近く経つけど、夜はこんな風にお茶を楽しみながら会話することが多い。その日あったことや仕事の話、それからどうでもいいようなちょっとした話まで、睦月さんはなんでも聞いてくれるし話してくれる。それが心地よくて、なんて聞き上手で話上手なんだろうと尊敬してしまう。

「明日には俺の奥さんになってくれるんだね。嬉しいなぁ。日付変わったと同時に届け出しに行きたいくらい」

 婚姻届は、結婚式である明日午前中に出しに行く予定になっている。式は午後3時からだから、午前中はそれなりにゆっくりできるはずだ。

「……出しに行く?」

 空になったカップをソーサーに戻して私は睦月さんを見上げる。今時間は9時を回ったところ。今からお風呂に入って早めにベッドに入ろうと思っていたけど、それもいいかなと口にする。

「……もう、本当に可愛いなぁ。俺の奥さんは」

 そう言いながら睦月さんは私の背中を引き寄せて、私の唇に自分のそれで軽く触れる。

「でも……やっぱり独身最後の夜を、さっちゃんとゆっくり楽しみたいかなぁ」

 そう言って、睦月さんはちょっとだけ悪い顔して笑っていた。
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