年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「髪、だいぶ伸びたね」

 目の前には肩をすぎるくらいまで伸びたさっちゃんの髪の毛。そこから時々雫が落ちると、湯船にポチャンと小さな音を立てていた。
 俺の腕の中に、同じ方向を見て収まっていたさっちゃんは、俺の言葉に顔を上げた。

「なんとかヘアアレンジできる長さになって良かった」
「そうだね。どんな髪型になるのか楽しみだな」

 さっちゃんの横顔に唇を落とす。

「うん」

 お湯に浸かっているからか、火照った顔で笑顔を見せた。

 こうやって、一緒にお風呂に入るのはもうすっかり日常になりつつある。最初は恥ずかしがっていたさっちゃんだけど、今は誘うと嫌がらずに来てくれる。お互いの髪を洗いあったり、マッサージしあったり。まぁ、エスカレートしてそれなりに色々と悪戯を仕掛けてしまうこともあるけど。

「もう上がる? のぼせそうだね」

 上気した顔と潤んだ瞳で俺を見上げているさっちゃんに俺はそう言う。正直こんな顔見せられたら、理性を保っている自信はないし。

「……睦月さん」

 そう言うとさっちゃんは体を持ち上げる。その顔は、俺しか知らない顔。

「……ん? どうしたの?」

 小さく、囁くように答えて顔を寄せる。より艶やかに色気を増したその表情は、言葉にしなくても俺を誘っているのを感じた。
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