年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 結婚して、いや、する前から、子どもをどうするかっていう話はしていた。でも話というほどでもなく、お互いの思いは同じだった。

 そして、自分でも驚くほど早く訪れてくれた娘。7月の終わりが予定日だったけど、産まれたのは8月。
 慣れない育児を睦月さんや、周りの人達の手を借りて乗り越えた。と言っても、きっと育てやすい子だったと思う。でも不意に訪れた赤ちゃん返りに悩まされもした。

 その娘が2才になる前の4月の終わりに産まれたのが息子。1人だとできたことも2人になると途端に大変になったり、保育園が見つからず、しばらく2つの園に送り迎えしたり、なんてこともあった。
 でも、睦月さんはいつでも一緒にそれを乗り越えてくれたのだ。

「睦月さん。この子の名前、考えてくれた?」
「うん。顔みたら、やっぱりこれだなって」

 そう言うと、睦月さんはポケットから小さな紙を取り出した。

「……素敵な名前」

 そこに書いてある文字を見て、私は笑みを浮かべそう言った。

「また、増えたね。月の名前が。俺達の家族が」

 睦月さんはそう言って、穏やかな優しい顔で子ども達を見る。

 そこには、娘の葉月(はづき)、息子の羽月(うづき)、そしてまた一人、私達の元にやってきてくれた渚月(なつき)の顔がある。

 大切な家族と、きっと蜜のような甘い月日を過ごしていけるのだろう。私はそんなことを思っていた。

Fin
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