3人の子供のシングルマザーの徒然回想録

あの夜のこと



あの夜、私は大きくなってきたお腹を抱えて、眠りを貪っていました。
とにかく、眠い。
それまでも、思春期以降、とにかく眠かったのに、さらに眠い。

その上、明日の朝は夫(当時)の出勤が早い。
起きられないことは「悪」だったので、帰りが遅かった夫を待ち、食事を出し、片付けをし、やっと布団に入って明日の朝に備えていました。

なのに、その夜…


ドン、ボコン、ギュー、ギュー


…眠りについていた私のお腹。中にいる主が、騒ぎ出し、起こされたのです。

寝ぼけていながら、お腹をさすり
「ねぇ、ママは明日の朝早起きだから、一緒に寝ようね」
そんなことを話しかけました。
ところが、お腹の主は、いつも響いてくる音を聴いて、反応したのです。
なお、一層、激しく。
ボコンとか、ギューとか、ドンドンとか。
楽しそうに遊んでるようです。

「ねぇ…」
私は2、3回、さっきと同じようなことを話しかけましたが、主は、遊んでいると思っているのか、動きを止めません。

結局眠れず、私は飛び出してくるような手足を、お腹の上からしばらくツンツンして、相手をしました。

会ったこともないお腹の子供。でも、間違いなく私の体の中にいる。
同じ一つの体を共有しているのに、こちらの状況、気持ちは共有できていない。

…これが、子供なんだ。

まだ20を少し超えたくらいの若い私は、そう思いました。

同じ体を共有しても、別の人格なんだ…

この時、感じました。
どんなに子供でも、ちゃんと意思を持ってる。
やりたいこと、楽しいこと、きっと、私とは違うことを感じて生きるんだと。

ちゃんと、話をしないと、いくら自分の子供でも、わかんないな…。

眠りを遮られて、腹立たしかったのに。
急に、そんなことを思った、あの夜。

あの夜が、私の独特な子供との関わりのはじまりだったんじゃないかと、

今になって、そう思うのです。

< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop