お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 コパルの報告を叔母のキャスリーンの耳に入れると、事態は大きく動き出した。
 叔父のロバートが外務大臣と言うこともあり、ウィリアムを襲ったと思われる男は、スパイ容疑でタリアレーナの警察に身柄を拘束された。
 男の身柄が拘束されている間に出発するべきと言うロバートの判断で、直ぐにアイリーン、ウィリアム、カトリーヌにコパルの四人はキャスリーンが用意させた木製の箱にそれぞれの身の回りの荷物とクッションなどの体を保護するものと一緒に詰め込まれ、ドクター宛の荷物として大海の北斗七星号に積み込まれた。


 箱の中から出てくるアイリーン達に、クルーが目を白黒させたが、ドクターだけは万事了解といった様子で、アイリーンの帰還を歓迎してくれた。
 コパルは若いクルー達の居住エリアにベッドを貰うと、クルー達に船のことをいろいろと教えて貰いながら、船での仕事を覚えていった。
 ウィリアムは、まだ階段の上り下りが難しかったので、ドクターの部屋で寝起きすることとなり、アイリーンは空室となっている一等航海士の部屋で再び寝起きする事になった。
 残されたカトリーヌは、船倉の一つ、高級な陶器やアクセサリーをしまうための客室並の設備のある部屋をあてがわれ、豪華なカウチをベッド代わりにして暮らすことになった。
 予告なしの突然の乗船、しかも貨物扱いに受け入れる船側が少し戸惑ったものの、最初の話し通り三日後には出航可能という事で、船にはウィリアムの荷物とささやかなカトリーヌとコパルの荷物が後から届けられ積み込まれた。
 しかしアイリーンは、最後まで悩んだものの、カルヴァドスに買って貰ったドレスを持って帰らない事にしたので、最初に船に乗せて貰った時と同じ、鞄一つだけでの乗船だった。


 カルヴァドスの私物一つ無い一等航海士の部屋は、こんなに広かっただろうかとアイリーンを困惑させるくらい広く、カルヴァドスの不在が夢の終わりを静かに告げていた。
 事情を知らないオスカーは困惑しながらも、別の船でカルヴァドスがエクソシアに向かったことを教えてくれた。そして、カルヴァドスに手紙を書きたいので、住所を代わりに書いて欲しいと言うオスカーに、アイリーンは自分も知らないのだと本当のことを伝えた。
 驚いたオスカーは、呆然としたまま甲板下のクルー達の空間へと戻っていった。

☆☆☆

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