お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 サイラスがアイリーンから預かっているウィリアムとアイリーンの王位継承権を抹消する書類は期限付きで、二人がその期日までに戻らなければ、サイラスは朝議にその書類を提出し、王太子ウィリアムは奇病のため王位継承が困難であり、タリアレーナで終生療養を続けることとし、身柄を叔母夫婦であるシュナイダー侯爵の元に預け置くこととし、今後の王位継承に支障が生じないようにするため王位継承を抹消とするものである。並びに、王女アイリーンは、他国へ嫁ぐことが決まっているため、王位継承を剥奪とするというもので、サイラスが元々、兄王から王位を簒奪したいと考えているならば願ったりかなったりの申し入れだが、兄王が王位にあり国が安定しており、甥のウィリアムもヴァイオリン奏者を諦めるなら立派な国王になれると考えているサイラスにとっては、悪夢のような提案書だった。
 普通の状況なら、サイラスが提案書を提出したとしても、朝議のメンバーは殆ど全員が難色を示し議決に至らない内容だが、そこにアイリーンによる王位継承権放棄の署名がある限り、朝議のメンバーもウィリアムの継承権剥奪には即同意するだろうし、アイリーン自身が国を慮り継承権を放棄していると分かれば、全員一致で議決する事ができるのは試さなくても分かっていた。
 もし、兄王が健康ならば、また別のアイデアも出るだろうが、半年以上、一年近くも病の床にあるとなれば、朝議の流れは決まってくる。
 ここへ来て、エクソシア皇家へ嫁ぐ話がアイリーンにあると知れば、朝議に出席する大臣達は皆諸手をあげてエクソシア皇家へ嫁ぐことに賛成するだろう事もサイラスには想像がついた。

「その頃には、ウィリアムが兄上をお止めしますよ」
 サイラスは言うと、一礼して兄の寝台を離れ、部屋の外で待つ侍従達に入室の許可を与えた。

☆☆☆

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