君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



「よし、決めた。
 今日はサバの味噌煮定食にするぞ」


 そのとき神倉さんがわくわくしながらそう言った。


「へぇ、神倉もそういうの食うんだな」


 すると那覇が神倉さんにそう言うものだから。


「なんだよ、
 私だって和食くらい食うんだよ」


 神倉さんは少し不服そうに那覇にそう言った。


「そういう那覇は何食うんだよ」


 今度は神倉さんが那覇にそう訊いた。


「俺はヒレカツ定食」


「……なんだよ。
 なんでオムライスとか言わねぇんだよ」


「なんでそうなるんだ」


「……あぁ、もう、
 なんでもねぇよ」


 なんとなく。
 神倉さんが那覇にそう言った理由がわかった気がする。

 神倉さんは那覇に言い返したかったんだ。

 那覇がオムライスとか言えば『イメージと違う』とかでも言おうと思っていたのかもしれない。

 それなのに那覇がヒレカツ定食って言ったから。
 神倉さんは那覇にツッコミを入れることができなくなってしまったのだろう。

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