エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
第二章 どうしようもなく惹かれていく
第二章どうしようもなく惹かれていく

晴天に恵まれた見合い当日、珠希は両親とともに郊外にある料亭『いそやま』を訪れた。
開店からわずか三年だが、料理の旨さが食通の間で評判の店だ。
予約が取りにくい店としても有名だが、見合い相手である碧の父の友人が営んでいる店らしく、その縁で部屋を用意してもらえたそうだ。
とはいえそろって医師である宗崎家の父と息子の勤務時間の都合で、午後三時という食事には微妙な時間だ。
今回はしっかりとした料理ではなく店自慢の和菓子とお茶を用意してもらった。
広い庭園に面した和室での時間は、見合いというシチュエーションを忘れてしまうほど和やかに過ぎていく。

「うちの担当をされている息子さんとは何度も顔を合わせているんですよ。珠希さんはお兄さんとよく似ていらっしゃいますね」

碧の父親であり宗崎病院院長の宗崎怜は、珠希に優しく笑いかける。
そういう彼も、息子の碧とよく似ている。
親子揃って抜群の見た目だなと、珠希は感心する。

「そうなの? だったらお兄さんはかなりのイケメンじゃない? 私も一度お会いしてみたいわ」

碧の母千波ものんびりとした口調で夫に続く。

「会うのはいいが、彼は妻を溺愛している既婚者だ。出会うのが遅かったな」
「妻を溺愛なんて、最高よ。尚更会いたくなっちゃったわ。だけどまあいいわ。こうして珠希さんとお会いできてうれしいもの。ふたりの息子の母っていうのは悪くないけど、娘がいる人生にも憧れてるの。パパもそうでしょ?」
「たしかに、そうだな」

菓子をおいしそうにほおばりながら、宗崎夫妻は人当たりのいい笑顔を珠希に向ける。
珠希たちが部屋に通されてからというもの、ふたりは珠希にあれこれ話しかけては場を盛り上げている。
大病院の院長という肩書きに近寄りがたいイメージを抱いていたが、ふたりとも気さくでホッとした。
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