エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「まだ先にしても、珠希のお兄さんが後を継ぐんだよね。私、小学生の頃お兄さん……和合拓真さんのピアノを聴いて感動したのを覚えてる」
志紀がふと口にした言葉に、珠希はぎこちない笑みを浮かべた。
「王子様みたいにかっこいいし、演奏は素敵だし。私が音大に進学を決めたきっかけだと言ってもいいくらい」
志紀は両手を胸の前で合わせ、夢見心地でつぶやいている。
「志紀は本当にお兄ちゃんのことが大好きだよね。忘れてないと思うけど、お兄ちゃんはとっくに結婚してるから」
「わかってるって。子どものころの単なる憧れで、アイドルのようなもの」
珠希は呆れた視線を志紀に向けた。
「まあ、妹の目から見ても、見た目が整ってるとは思うけど。アイドルなんて言い過ぎ」
「言い過ぎじゃないって。和合拓真がピアニストの道を断念して父親の会社の後を継ぐって聞いたとき、本当にショックだった。それこそアイドルが引退してしまうんだから、当然でしょ」
「……そうだね」
彼女以外の人の口からも、同じ言葉や思いを聞かされ胸を痛めた過去を思い出す。
〝和合拓真という才能あるピアニストが、ピアノから離れなければならない悲運〟
〝大企業の御曹司ゆえの宿命〟
などとSNSで話題になるのも当然の実績を残していた兄の拓真。
中学、高校と音楽科で学び、国内最難関の音楽大学に入学後は国内外のいくつもの音楽コンクールで優勝するなど華々しい結果を残した。
大学院を卒業するときにはオーストリア留学の話があったが、拓真はそれを辞退し家業を継ぐ未来を選んだ。
それまで一心に向き合っていたピアノから離れ、和合製薬に入社すると決めたのだ。
ピアニストとしての将来を嘱望されていた中でのその決断は、彼の演奏に注目していた音楽家やファンに大きな衝撃を与えた。
志紀がふと口にした言葉に、珠希はぎこちない笑みを浮かべた。
「王子様みたいにかっこいいし、演奏は素敵だし。私が音大に進学を決めたきっかけだと言ってもいいくらい」
志紀は両手を胸の前で合わせ、夢見心地でつぶやいている。
「志紀は本当にお兄ちゃんのことが大好きだよね。忘れてないと思うけど、お兄ちゃんはとっくに結婚してるから」
「わかってるって。子どものころの単なる憧れで、アイドルのようなもの」
珠希は呆れた視線を志紀に向けた。
「まあ、妹の目から見ても、見た目が整ってるとは思うけど。アイドルなんて言い過ぎ」
「言い過ぎじゃないって。和合拓真がピアニストの道を断念して父親の会社の後を継ぐって聞いたとき、本当にショックだった。それこそアイドルが引退してしまうんだから、当然でしょ」
「……そうだね」
彼女以外の人の口からも、同じ言葉や思いを聞かされ胸を痛めた過去を思い出す。
〝和合拓真という才能あるピアニストが、ピアノから離れなければならない悲運〟
〝大企業の御曹司ゆえの宿命〟
などとSNSで話題になるのも当然の実績を残していた兄の拓真。
中学、高校と音楽科で学び、国内最難関の音楽大学に入学後は国内外のいくつもの音楽コンクールで優勝するなど華々しい結果を残した。
大学院を卒業するときにはオーストリア留学の話があったが、拓真はそれを辞退し家業を継ぐ未来を選んだ。
それまで一心に向き合っていたピアノから離れ、和合製薬に入社すると決めたのだ。
ピアニストとしての将来を嘱望されていた中でのその決断は、彼の演奏に注目していた音楽家やファンに大きな衝撃を与えた。