エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「長男だから仕方がないかもしれないけど、大企業の社長の息子じゃなかったらピアニストとして成功していたはずなのにね」
電車内のざわめきに混じって届く志紀の言葉を、珠希は表情を消して聞き流す。
今の言葉もこれまで何度も言われてきた。
多くの人が、彼の才能を惜しんだのだ。
それは子どものころからの兄の努力と才能を間近で見てきた珠希も同じ。
『俺が会社を継ぐから、珠希はこのまま音楽を続ければいいよ』
留学を断念し大学院卒業と同時に音楽から離れて父の会社に入社した拓真の言葉が、今も珠希を苦しめている。
『珠希には社長なんて向いてないだろ?』
その日拓真が珠希に見せたのは、ステージに立つたび貴公子と称された艶然とした微笑みではなく、子どものような笑顔だった。
それから五年が経ち、珠希は子どものころに拓真と通っていた音楽教室の講師として音楽を続けている。
珠希を気づかい自分の人生を家業に捧げる決断をした、拓真への申し訳なさを抱えながら。
職場に戻る志紀が途中の駅で下車した後、珠希はひとりで白石病院を訪ねた。
白石病院は多くの診療科があり有名ドクターや最新の医療機器が揃っていることで有名な総合病院で、連日全国から多くの患者が訪れている。
大宮病院よりも遙かに規模が大きく病床数も三倍以上という、地域の基幹病院だ。
珠希は受付に挨拶を済ませて上階の病院事務所に急いだ。
今日はこれから来月のクリスマスイブに開催されるクリスマスイベントの打ち合わせなのだ。
珠希が講師として働いている音楽教室は全国各地に教室を構え、教室ごとに地域貢献活動を行っている。
珠希が在籍している教室では、講師たちが毎年クリスマスイブに白石病院のイベントに無償で参加し、病院内のホールでピアノやエレクトーンで曲を披露している。
電車内のざわめきに混じって届く志紀の言葉を、珠希は表情を消して聞き流す。
今の言葉もこれまで何度も言われてきた。
多くの人が、彼の才能を惜しんだのだ。
それは子どものころからの兄の努力と才能を間近で見てきた珠希も同じ。
『俺が会社を継ぐから、珠希はこのまま音楽を続ければいいよ』
留学を断念し大学院卒業と同時に音楽から離れて父の会社に入社した拓真の言葉が、今も珠希を苦しめている。
『珠希には社長なんて向いてないだろ?』
その日拓真が珠希に見せたのは、ステージに立つたび貴公子と称された艶然とした微笑みではなく、子どものような笑顔だった。
それから五年が経ち、珠希は子どものころに拓真と通っていた音楽教室の講師として音楽を続けている。
珠希を気づかい自分の人生を家業に捧げる決断をした、拓真への申し訳なさを抱えながら。
職場に戻る志紀が途中の駅で下車した後、珠希はひとりで白石病院を訪ねた。
白石病院は多くの診療科があり有名ドクターや最新の医療機器が揃っていることで有名な総合病院で、連日全国から多くの患者が訪れている。
大宮病院よりも遙かに規模が大きく病床数も三倍以上という、地域の基幹病院だ。
珠希は受付に挨拶を済ませて上階の病院事務所に急いだ。
今日はこれから来月のクリスマスイブに開催されるクリスマスイベントの打ち合わせなのだ。
珠希が講師として働いている音楽教室は全国各地に教室を構え、教室ごとに地域貢献活動を行っている。
珠希が在籍している教室では、講師たちが毎年クリスマスイブに白石病院のイベントに無償で参加し、病院内のホールでピアノやエレクトーンで曲を披露している。