断片集




……さて、ページは閉じてもらえたかな。

海の上に不安定にかかる階段を見る。ある意味安定してるけど、でもその真下は海なのだ。
がくがく足が震えて、なかなか前に進まない。
やらずに諦められないし、とりあえず、慎重に階段に足をかけてみる。
横目に、波を見た途端に足が進まなくなった。
「もう帰る! かえるー! かーえーる!! うわーん」
「けろけろ」
お隣に居る古里さんは、ただ笑っているだけだった。
「何騒いでるんすか」
後ろから、って言うか、前から声。同じ学校の先輩こと、日扇街ナツだった。
「仔猫ちゃんが暴れてるの」
古里さんが、雑な説明をしてぼくを指差す。
「暴れてませんんん! こ、これから乗る……ちょっと、外の空気を楽しんでただけです」
「ああ。そう? だったら、いいんですけどね」
ナツが、曖昧なことを言うが、しかし、その場から動かない。
「お前、高いところがだめなのか?」
ぼくは、何も言わない。良いもダメも無い。
ダメなのは高いところじゃなくて、落ちる瞬間のイメージが浮かぶことだ。
そういう記憶が、なんだか、一度あったら、なかなか消せないのだ。
「怖いか?」
「怖くないです」
っていうか、お前は先に乗ってろよ。
後で行くから、と言おうにも上手くいえない。
こっちのことなどいいから、と、言えない。
「そうか。怖いんだな」
ぼくは何も言わなかった。
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