【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「……こちらこそ、よろしくお願いします」
「お客様、お疲れでしょう。歓迎の準備ができるまで、用意いたしました部屋でお休みください」
「え? 俺は……」
「シルヴァ様も、顔色が悪いですよ? 休んでいってください」
「う……。なんというか、この家の執事には敵わないんだよなぁ」

 騎士団長様とオーナーは、長年レトリック男爵家に仕えてくれている執事のリバーに客室に案内され、玄関には私と弟だけが残された。

「姉さん……」
「久しぶりね?」
「ウィアー子爵令息みたいな男と婚約破棄できたのはよかったけど、僕はてっきりシルヴァ様とくっつくと思ってた。王宮魔術師と騎士団長、両方侍らせてくるとか、姉さんは世界征服でもするつもりなの?」
「へ?」
「……あいかわらずの無自覚か。姉さんは、変わらないね」

 急に世界征服なんて、訳の分からないことを言い始めた弟。
 苦労して、大人びてはいても、まだそんなお年頃なのかしら。

「姉さん、王国の英雄を二人とも連れてきたことへの、例え話だ。分かっているよね」
「は、はい……」

 昔から、年下のはずの弟は、私よりしっかりしていて敵わない。
 それにしても、恋人になったはずの騎士団長様はともかく、オーナーは私のことを妹のようにしか思ってないのに、考えすぎだ。
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