【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 ヒョイッと私の背負っていたリュックを取り上げたその人は、久しぶりに会うけれど、やっぱり目が開けられないほど眩しい美貌だった。

「お久しぶりです。シルヴァ様!」
「よく来たね、リティリア。ただ、今後俺のことはオーナーと呼ぶように」
「オーナー?」
「そう、いい子だ」

 頭にポンッと置かれた手。
 シルヴァ様、いいえ、これからはオーナーと呼ぶのよね。オーナーにしては、近い距離。
 一人で来た私を心配してくれてのことだろう。

「……今日からここで働くんですね! 面接とか」
「……働かなくてもいいけれど、リティリアがそれを望むなら、今から面接をしようか」
「はい!! こんな素敵なお店で働けるなんて夢みたいです!!」
「そう、気に入ってくれたのなら、作った甲斐もある」

 いつものように、ミステリアスな微笑みを私に向けたオーナーは、エスコートするように私を店内へ誘った。

「すごい!! え、どんぐり山ですか!?」
「ああ、リティリアが来る日は、このテーマにしようと決めていたから」
「……妖精」

 お店の中の景色は、魔法で作られたものだ。
 けれど、懐かしい景色の中には、金色の鱗粉をまき散らして飛ぶ妖精の姿。

「オーナー、これはダメです」
「ここには、俺とリティリアしかいない。誰も見ていない」
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