【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

魔鉱石の色を染めて


 さっきまでなら、気負うことなく入れただろう室内。
 でも、真相に気がついてしまった今となっては、ドアを叩くのにも深呼吸が必要だ。

 ……でも、オーナーは、私に命を救われた恩を返してくださったのよね?

 あまりに大きすぎたお返しに驚いてしまったけれど、今までだって、いつもオーナーに助けてもらってきた。
 私は、私のやり方で、お礼をしていけばいい。

 ふぅっ、と強く息を吐いて、ドアをノックする。
 そして、そっと開けて部屋を覗くと、淡いグリーンの瞳と、金色の瞳が同時にこちらを向いた。

 向かい合った二人は、あまりに絵になる。
 そういえば、カフェフローラのダリアも、オーナーと騎士団長様は、熱狂的なファンクラブがあるほど人気だと言っていたわ。

 二人ともどこか深刻な表情をしているから、なにか大事な話をしていたのだと予想する。

「あの、お邪魔でしたか?」
「リティリア嬢が、邪魔なはずないだろう」

 立ち上がった騎士団長様は微笑むと、私のそばに来て、手を取った。
 そのまま、当然のようにエスコートされた私は、先ほどまで騎士団長様が座っていた場所に座らされる。

 そして、隣に座った騎士団長様。
 なぜか、いつもより少し距離が近いような……。
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