【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 魔女様の前で勢いよく立ち上がり、そしてふらついた私を大きな手が支える。
 顔を上げれば、申し訳なさそう、かつどこか気まずそうなオーナーが私を見下ろしていた。

「……オーナー? 何だか雰囲気が」
「……魔力がほとんどないせいだろう。時空魔法を無理に抑えた弊害だそうだ。残念ながら、まともに魔法が使えない」
「命に別状は!!」
「……ない」

 喜んで良いものか困惑していると、肩をポンッと叩かれる。
 微笑んだオーナーからは、魔力の支配から解放されたからなのか、いつもの妖艶な雰囲気が消え去って、可愛らしさとかっこよさが同居したような爽やかさが感じられる。

「リティリアとエルディス。そして、ヴィランド卿のおかげだな」
「えっと、その。……良かったです!!」
 
 感極まってポロポロと涙を流してしまった私。
 オーナーは、まるであやすように頭を撫でた。

「魔法、使えなくなっちゃったんですね……」
「ああ」
「……そうね。シルヴァはもう、王国を守るような魔法は使えないけれど、安心して」

 扉が現れる。
 空間に突如現れたそれは、とてもよく見知った懐かしい扉だ。

「カフェ・フローラ……」
「ところで、リティリア。あなたのことも助けてあげたのだから、対価をいただくわ」
「……はい。お支払いいたします」
「あら? 内容も聞かないなんて、あいかわらず無鉄砲だわ?」
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