【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

魔女の家とカフェ


 ***

 明るい日差しに、腕で目を覆う。

「あら、ようやく起きるのね」

 妖艶なその声は、たぶん私を心配しているわけではない。
 まもなく私が目覚めることも、彼女にとってはすでに既知の未来なのだろうから。

「魔女様……」
「リティリア、よく頑張ったわね」

 魔女様の手には、淡い緑色の宝石が握られている。不思議なその石は、金や銀だけでなく角度によって淡い紫色の光を宿していた。

「その魔石、どうして魔女様が?」
「どうしてって、対価だからよ?」
「……対価」
「そう、魔女はどんなに願われても、見合った対価をもらわない限り願いを叶えることはできないの」

 魔石をのぞき込んでみれば、私の顔が写り込む。
 その中の金と銀や紫の光を見つめているうちに、寝ぼけていた頭が急速に冴えていく。

「騎士団長様は!? オーナーとエルディスは!?」
「あらあら。ようやく名前を呼んでもらえるようになったのにお気の毒」
「っ、アーサー様は!!」
「無事よ? 対価はいただいたけれどね」
「対価を!?」
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