【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 英雄と呼ばれ、ずっと戦い続けている騎士団長様は、王都にいてもやはりお忙しい。

(意外と甘いものがお好きとわかったから、チョコレートを少し用意しておこうかな)

 そんなことを思いつつ、ちらりと客席に目を向ける。メニューを閉じたタイミングでお客様に声をかけた。

「何になさいますか?」
「おすすめは?」
「朝食がまだでしたら、こちらのサンドイッチがおすすめです。妖精が蜜を採ったあとの少し辛い花と、北端のリーヴァ王国特産のハムを挟んでいます」
「ふむ。では、それをもらおうか。あと、今日のコーヒーを」
「かしこまりました」

 そのお客様は、笑顔も優雅で気品がある。
 けれど、それでいて感情が読めない。

(……でも、どこかでお会いしたことがあるような?)

 それは、以前騎士団長様が初めて来店したときに感じた引っかかりによく似ている。
 知り合いというほどではないけれど、私は確かにお客様のことをどこかで見たことがある。
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