【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「えっと、お好きなお席が選べます」

 落ち着いて、スマイルよ! リティリア!
 接客の基本は笑顔である。だから、笑うのリティリア!

「そうか……。できればあまり目立たない席がいいな」

 こんなお店に一人で入ってきたのに、恥ずかしいのだろうか。
 もしかして、可愛いものが好きだったりするのだろうか。

「では、こちらのお席がおすすめです」

 私は、外から見えない、ほとんどのテーマでオブジェの影になって目立ちにくい角の席に騎士様をご案内した。

「ありがとう」

 口の端をあげて、ほんの少し微笑んだ瞬間、厳つい雰囲気が和らいで、かわいらしく見える騎士様。
 その周囲は、発光でもしているように眩しい。

 席に座る所作も優雅だ。おそらく騎士様は、貴族なのだろう。

「何になさいますか?」
「…………コーヒーを」
「かしこまりました」

 少し居心地が悪そうな騎士様を見ていて、デートの下見なのではないかと予想する。
 こんな風に、喜んでもらえるように頑張ってくれるなんて、彼女さん、あるいは婚約者さんは幸せ者だわ。
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