【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 その時、扉が開いて、お客様の来店を告げるベルが鳴った。
 慌てて、つついていた花から指先を離して、入り口へと向かう。
 そして、私は、ピタリと石像のように固まった。

 背が、とても高く、肩幅も広くてがっしりとしたお客様が、私を見下ろしている。

 お一人で来店する男性のお客様がいないわけではない。
 けれど、鍛え抜かれていると一目でわかる体を待つ、そのお客様は、私の知っている限り、このお店に来たことがないタイプだった。

 それでも、美貌も相まって、その姿は、おとぎ話の国に、姫を助けるために現れたように見えなくもない。

 ――――騎士様。

「い、いらっしゃいませ」
「ああ……。席は空いているか」

 私は、その言葉に、思わず後ろを振り向いた。
 見ての通り、店内はガラガラだ。
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