【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

騎士団長様のおもてなし


「すまない……。予想以上に大事になっていたな。この屋敷に人を招くのが、初めてなんだ」
「……光栄です」

 屋敷に人を招くことがない。そうね、個人のお宅でほとんど帰ってもいないと言っていたものね。
 改めて浮かぶのは、人の気配はなくても、掃除が行き届いたお屋敷の中。整えられたお庭。

 まちがいない。使用人の皆さまは、ずっとお客様をもてなしたかったに違いないわ。

「……なおさら、私なんかで申し訳ない」

 こんな、いかにも庶民的な格好をした女性が訪れて、皆さま残念に思っているのではないかしら?

「そろそろ顔を上げるように」

 その言葉にあわせて、使用人たちが一斉に顔を上げる。
 その動きは、一寸の乱れもなくて、思わず感心してしまう。

「――――このたびは、お招きいただき、このような歓迎まで……。ありがとうございます」

 久しくすることがなかった貴族令嬢としてのお辞儀。
 スカートは、裾の短いワンピースだけれど、少しだけ持ち上げてみる。
 男爵家のお父様と大恋愛の末結婚したお母様は、伯爵家の三女で、礼儀作法にはとても厳しかった。
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