年下男子
「久しぶりだな、蘭」
「そうね」
その日のお昼時、私は会社の近くのレストランにいた。

「蘭が、頼みがあるなんて言うから何事かと思ったよ」
「うん、ごめんね急に」
「いいよ、ちょうど在庫があってよかった」

幸いなことに、丸越デパートの商品はすぐに手配でき夕方までには納品できることになった。
向こうの部長からも商品が入れば文句ないと言ってもらい、事なきを得た。
しかし、問題は解決方法。
自社の倉庫に在庫があればすぐに出荷できたけれど、在庫はなかった。
だからこそ田中君も小分けにして納品しようとしていたわけで、そこまでは想定内。
じゃあどうしようかと考えて思い付いたのが、他の店舗から譲ってもらうこと。
そう思って真っ先に浮かんだのは同期で営業一課の課長を務める山本順だった。
私が所属する営業二課がイベントなど特設の売り場を担当するのに対して、営業1課の担当は常設の売り場。普段の交流はないけれど、商品の数も量もうちより数段多いはず。そう思って頼んでみた。
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