年下男子
「本当に助かったわ。ありがとう」
「いいよ。おかげで俺も蘭とこうして話せてうれしい」

この山本順はただの同期ではない。
一言で言えば元カレ。まだ20代の頃に2年ほど付き合っていた。
当時はこのまま結婚するのかななんて思っていたけれど、そうはならなかった因縁の相手だ。

「奥さん元気?子供も生まれたんでしょ?」
「ああ」

私と付き合っていたはずの順が結婚した相手は取引先のお嬢さん。
今はまだうちで務めているけれど、ゆくゆくは奥さんの実家が経営する会社に入ることになっているらしい。

「これは今日のお礼。私の奢りだからどんどん食べてね」
「おう」

本当なら、こうして二人でランチに来ることも避けたかった。
それでも、今回無理なお願いをしたのは私の方だからと思って、順の誘いに乗った。

「お前も、そろそろ結婚とか考えないの?」
パスタを口に運びながら、順が自然な流れて聞いてくる。

「考えないわね」
「それって俺のせい?」
「そんなこと・・・」
ないわよとは素直に口を出てこない。

私と順の間には暗い過去がある。
私が恋愛から逃げるようになったのも、きっと順とのトラウマがあるからだと思う。

「蘭は相変わらず真面目だな」
「そうかなあ」

楽しそうに笑う順もあの頃のままだけれど、私たちはもうあの頃には戻れない。
だって、今の私たちはただの同期なんだから。
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