竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
転生養女は早く大人になりたい

1.命の恩人は前世の旦那様

(どうして忘れてたんだろう?)


 ザワザワと音を立てて草木が揺れる。
 風を切る鋭い音に次いで聞こえる、肉を断つ鈍い音。
 わたしの傍らには、つい先程こと切れた、この世界での両親が横たわっていて、血なまぐささに吐き気が湧き上がる。


(でも、でも……)


 わたしの瞳は、目の前の美しい男性に釘付けだった。
 お星さまを集めたみたいな眩く輝く白銀の髪の毛に、エメラルドみたいに鮮やかな緑色の瞳。ほんの少し尖った耳と、頭から生えた二本の角が、現世の彼がわたしとは違う種族だってことを示している。
 だけど、どんなに姿かたちが変わったって間違いない。


(旦那様だ!)


 瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
 大好きな大好きな、わたしの旦那様。前世の彼とわたしは仲睦まじい夫婦だった。
 何処に行くにも何をするのも一緒で、毎日ひたすら幸せで。
 生まれ変わっても絶対、絶対に一緒になるって、わたしたちはそう約束をした。


(今の今まで忘れていたけど)


 わたしは旦那様ともう一度巡り会うために、もう一度神様から命を貰った。きっと、そう。そうに違いない。


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