竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

12.子どもという現実

 初登校を終えた日の夕方、わたしは嬉しいような悲しいような、何とも言えない気分を味わっていた。


(わたしって……わたしって…………)


 自分というアイデンティティが、グラグラと音を立てて揺れている。
 それは当然、学校で自分と同年代の子どもたちと過ごしたことが原因だった。


「どうしたんですか、アイリス様? 学校、楽しくなかったんですか?」


 ロイが不安そうな表情で尋ねる。


(わたし、そんなに酷い表情をしているのかな?)


 ペタペタと自分の顔を触りながら、わたしは首を横にる。


「違うよ、ロイ。学校は楽しかった。すっごく楽しかったんだよ」


 そう。実際、学校はとても楽しかった。

 けれど、お蔭でわたしは、自分が紛れもなく『子ども』なんだっていうことを思い知ってしまった。

 現世の学校も前世と学ぶことは大差ない。言語や算数、社会のことを一から学ぶ。
 それから皆とご飯を一緒に食べて、外でたっぷり遊んで、皆で一緒に帰路につく。

 そんな当たり前のことがとんでもなく楽しくて、同時に酷く嫌だった。


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