竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

17.極彩色の翼を見守る

「どうしてですか?」


 向かいの席に座ったアクセスに尋ねる。
 気を抜くと、涙が零れ落ちそうだった。


「わたしが、人間だからですか?」


 アクセスはピクリと眉間に皺を寄せ、黙ってわたしを見つめている。

 旦那様に再会するまで、わたしは魔族と人間の違いについて考えたことは無かった。同じ人型をしているのだし、そんなに差はないんだって、そう思っていた。
 けれど、本当はそうじゃないのかもしれない。緊張で心臓がバクバク鳴り響く。


「……俺たちにとって、おまえ達人間は、『猿』や『ゴリラ』のような存在だ。姿かたちが似てはいるが、根本的に異なるものとして認識している」


 アクセスはそう言ってゆっくりと目を伏せる。


「できること、できないこと、進化の過程や身体の造りに至るまで全てが違う。
人間が生まれてから死ぬまでは約八十年間。けれど、魔族はその5倍、約四百年の時を生きる。おまえが死ぬ頃、リアンはようやく人生の折り返し地点を過ぎたぐらいの年齢だ。人間でいう40代手前……お前が死んだあと、あいつは二百年以上もの時を生きることになる」


 それは、知りたくて知りたくなかった現実だった。
 わたしはそっと胸を押さえる。旦那様とわたしは、そんなにも異なる種族なんだって思うと胸が痛かった。


「生物は皆老いる。けれど、老いるスピードは種族によって異なる。人間のそれは、俺たちにとって早すぎるんだ」

「……そう、ですね。言いたいことは分かります」


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