月下の君には秘密です。
「…送ってく。」
そう言って俺もベンチから立ち上がった。
「ウソッ!どうしたのッ、超優しいじゃ~ん!」
「…ははッ。」
俺はそう笑って歩き出した。
紗季は俺の隣で、
「…せっかくアッキーがくれたココア、冷めちゃったねー!?」
といつも通りに笑っていた。
多分、
俺は井上を好きなまま…。
それは、
ずっと変わらないけれど。
もしかしたら…
いつの日か、
本当に紗季を好きになる日が来るかもしれない。
そう冷めたココアをポケットに突っ込みながら、思っていた。