僕の愛おしき憑かれた彼女
「てゆーかさ、砂月の前でも、俺は、僕って言わなきゃいけねーのか?」

「あはは、僕だけ、丁寧だね」

と、砂月が再びココアに手を伸ばした。遠くに行くわけでもないのに、ココアに伸ばした左手を捕まえると抱き寄せた。

砂月が俺の右頬に触れる。

「彰、ずっと一緒に居ようね」

そのまま、当たり前のように唇を重ねる。

ココアの香る甘いキス。キスを繰り返しながら、このまま押し倒してしまおうかと、思案していたところで、携帯のラインが鳴った。

転がってるスマホの液晶をチラッと見れば、駿介からのメッセージ受信を伝えている。

「駿介くん?」

砂月が、こつんと額を俺の額にぶつける。

「あぁ、ライン。お礼言っとかなきゃな」

スマホを拾い上げて、入力を始めた俺の左頬に砂月は甘いキスを落としてから、視線をテレビに戻してココアを飲み始める。

こうやって、なんて事ない日常に、これからずっと隣に砂月が居ること、ずっと隣に居られることに毎日感謝して、毎日好きだと伝えよう。

俺は、送信ボタンをタップして、スマホを放り投げた。お風呂上がりの、石鹸の香りとココアの甘い匂いに誘われる様に、再び両手に砂月を包み込む。

「砂月、好きだよ」

砂月が、俺を見上げてじっと見つめた。
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