僕の愛おしき憑かれた彼女
「……ニャーン」

「……え?……おい砂月?」

砂月は、白く小さな手を握ると、瞳の上を撫でる様に動かし、ゴロゴロと喉を鳴らす。

「ニャーン……」

するりと俺の脇腹に、華奢な身体を擦るように甘える。

ーーーーこの仕草って、まるで……。


「砂月、もしかして……」

砂月は、返事を返すことなく、クッションの上に、小さく身体を縮めて、丸くなると、瞳を閉じてしまった。

テレビを見れば、『また虹の橋で会おうね』と動物番組のテロップが流れていた。

「おいっマジかよ!俺は、猫と新婚初夜かよ……」

俺は、そっとその長い黒髪に触れる。ふわふわのその髪から、触れるたびに俺の大好きな砂月の甘い匂いがする。

俺は、今日『永遠の約束』を嵌めたばかりの砂月の左手の薬指にキスを落とす。


ーーーー「愛してる」


直接、砂月に言えるのはいつになるだろう。

好きだと伝えるのにさえ、16年かかった俺だ。もしかしたら照れ臭くて、皺皺のお爺ちゃんになった頃に、やっと言えるかも知れない。

でも毎日、この愛おしさを、ちゃんと砂月に伝えたい。どれだけ砂月が大切で、愛おしいのか伝えるよう努力するから。

だから僕の側にいて。

決して離れないで。

きっとこれからも沢山喧嘩して、ぶつかり合って、泣いて笑って、憑かれて祓って、それでもずっと一緒に居よう。


三歳で恋をした彼女の名は砂月。
俺の、僕の、大切な砂月。
何度憑かれたってかまわない。


ーーーー僕が永遠に祓ってあげる。


『僕の愛おしき憑かれた彼女』

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