虜にさせてみて?
隣でずっと見ていたが優しく抱き上げて、安心させる様は正にパパみたいだったよ。

扱いに慣れてるのかは別として、子供には本当に優しい人は分かるんだろうな。

表情が笑顔じゃなくたって、特別なあやしをしなくたって安心出来る、そんな存在。

それから響は自分の子供なら尚更、愛情を注ぎそうだよね?

女の子には何だかんだ言っても、激甘かもしれないよね?

「俺、結婚したらコッチに住みたいんだ。住み慣れてるし、学校だって選べるし、不自由はないと思うんだ」

「ん? ……うん」

話がズレてる気もするが、響の家族計画だろうか?

「……なんて、言ってみただけだけどって言ったら、また、ひよりがキレるんでしょ?」

意地悪そうにクスッと笑って、頬っぺたをつねられる。

「ひよりさえ良ければ、いつでも、こっちに戻るんだけどな~?」

はい?

遠回しだけれど、昨日に引き続き、プロポーズみたいな流れ。

「わ、私は……」

美奈のように目標があってオーベルジュで働いている訳でもないけれど、仕事は楽しいし美奈とも離れたくはない。

でも、響を失いたくはないのも事実。

響がずっとオーベルジュで働いてくれるならと思っていたけれど、東京に戻りたいんだもんね。

“生まれ育った街”だもんね、当然だよね?

美奈も東京に住むんだったらな、心強いし、安心出来るけれど。

「はぁっ、そんなに考え込まなくても。軽くショックだな」

「ち、違っ! 勿論、着いて行きたいんだけど美奈が居ないと寂しいだけなの」

慌てふためいて口に出した言葉は、直球すぎたみたいで響は笑う。

「美奈ちゃんか。最強だな、勝てないかも」

「み、美奈に余計な事を言わないでよっ」

「はいはい」

響が笑うから、言った自分が何だか恥ずかしくて顔に火照りを感じた。

「もうっ、笑いすぎだからっ! 子供はね、二人以上は欲しいんだから、ちゃんと働かないと養えないんだからっ!」

この際、もういいや。

遠回しのプロポーズ紛いにおまけ付きの返事をしてあげる。

半ば、ヤケになっているのかも?
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