虜にさせてみて?
「二人以上かぁ。頑張れるかな、俺……」

「頑張らなきゃ、駄目なのっ! 子供の為に頑張れないと良い父親になっ……」

“良い父親になれないよ”

――そう言いかけて止めた。

軽々しく話していたけれど、響には実父の記憶がない。

「“なっ”……の後は何だよ? まぁ、だいたいは想像つくけどな、気にするな」

フッと鼻で笑って、何でもお見通しかのように言い放つ。

お父さんの事を気にしたのがバレたか。

「俺は一度も行った事がないから、行ってみたい所があるんだけど?」

「ん? いいよ、どこ?」

「夢の国の下見。いつか、子供が産まれた時の為に。まぁ、ついて来て」

照れくさそうに言って、連れて来られた先は正に夢の国だった。

“いつか、子供が産まれた時の為に”

何年後になるかは分からない、私の子供の為とは限らない。

それでも、明るい未来を信じて、今日も生きていく――
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