虜にさせてみて?
虜にさせてみて?
荷物を運び終えて、ガラリとした古い寮の部屋。
沢山の思い出が詰まった寮は、全員の引っ越しが終わったら取り壊される。
共同だったお風呂もトイレも、今度の寮は個人に1つずつある。
お風呂は掛けながしの温泉だったんだよね、1日の疲れが次の日に残らなかったのも、そのせいだったのかもなぁ。
美奈と一時間位、おしゃべりしながら入って、逆上せてしまい、倒れそうにもなったよね。
最後に入ろうかな? 今日は引っ越しの為の交代での休みなんだから、ゆっくり入ってお別れしよう。
「ひより、お風呂入ろっ」
ドアをドンドンと叩いて訪ねて来たのは、美奈とさっちゃん。
偶然にも同じ事を考えていたんだね。
タイミングが良くお風呂は誰も入ってなくて、三人ではしゃいでしまった。
「きゃあ、な、何でジロジロ見るの、さっちゃん!」
「いや、ひより、胸デカクなったなーって思ってさ。水野君のおかげ?」
「ち、違うもんっ! そんな事ないもんっ!」
さ、さっちゃんの馬鹿っ!
旅行から帰って来てから、何回かは肌を重ねたけれど……って違う。そういうのが原因ではなく、気の所為だと思う。さっちゃんの妄想による、単なる目の錯覚。
私は体を洗っている途中だったけれど、さっちゃんから離れたシャワーに移動した。
親父発言をするさっちゃんの隣に居たら、何をされるか分からないもんね。
「ひより、言ってやればいいじゃん! さっちゃんこそ、彼氏とはどうですか? って。さっちゃんの彼氏こそ、やりたい盛りじゃん!」
カラーンッ。
「うわっ、熱っ」
さっちゃんは動揺して、シャワーをタイルの上に滑らせて、美奈の方にお湯が勢いよく出ている。