虜にさせてみて?
夜道を立ち止まり、立ち止まり進んで行く私達に早足で来た響君が追い付いた。

「こんな暗い中、コンビニまでなんて無理だよな?」

響君の言葉に反応した湊君が、「ごめんね、美奈が飛び出して来ちゃって」と本当に申し訳なさそうに言ったが、美奈が逆上した。

「美奈は怖くないよ!湊と響君が帰りたいなら、ひよりと二人で行くからっ」

湊君の腕をするりと離して私の腕にきつく絡みつく。二人を置いていく勢いで早足で歩く美奈。

この後、見兼ねた湊君が美奈に向かって放った言葉には愛があった。

「美奈、分かったから寮に戻ろう?……寮に戻って一緒に寝よ?」

美奈は湊君の暖かい言葉を素直に聞き入れた。湊君の元へと駆け寄り、思いきり抱き着く。

「いたた……」

その反動で湊君は道路に尻餅をついた。

私は響君が吹き出した事を暗い夜道でも見逃さない。尻餅をついた後の港君は可愛らしく笑って、私もつられて笑う。

湊君は皆に迷惑をかけちゃいけないと思い、恥ずかしいセリフを言ったはず。

湊君も響君もも不器用だけど根は優しい。思ったように表現出来ないだけ。

「ごめんね、遅くまで。寮に帰ろう?」

逃げ出さないように美奈の手をしっかり握って謝ってきた湊君。

「ううん、大丈夫だよ。楽しかったね。じゃあ、帰……」

「いいよ、別に。せっかくだから、俺は、ひよりと散歩して帰るから。おやすみ」

私の言葉を遮って、響君は『おやすみ』なんて言って手を振ったから、二人も手を振り返して来た。

私は帰るんだからっ! と思い、二人の後を着いて行こうとするとガシッと腕を掴まれた。

「ほっといてやれよ」

「何でよ? 帰りたいのに!」

「お前、本当に馬鹿だな。美奈ちゃん、湊がお前とばっかり話してたから、ヤキモチ妬いてたんじゃない? 気付かなかった?」
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