虜にさせてみて?
皆が居るのに堂々と宣言する駿。

私は俯いたまま、顔を上げる事が出来ない。響がやっと口を開く。

「あっそ。ひよりだって、その気なんじゃない? さっき通りかかった時に、抱き合ってたみたいだったし……」

そう言うと私をチラッと見た。響には見えていたんだ。

「それは違うっ! 駿が勝手に……」

「ふふっ、抱き合ってたのとは違うかな? 響君、拗ねてるの? ヤキモチ妬きなんだね。大丈夫だよ、俺が無理矢理しただけだから」

私が否定しようとしたら、駿が横から口を挟んできた。

「実際にはね、無理矢理、キスしたんだよ。そしたら唇をかじられた。暗くて分からないと思うけど、かじられた部分が切れて血が出ちゃった」

言い終わると舌を出して、私がかじった部分を軽くなぞる駿。

その仕草が妙に色っぽく見える。そういう仕草の一つ一つが、私が駿に夢中になった要素の一つだった。

初めて気付いた男の色気というか。

性格は悪いけれど、駿は表向きは優しいし見かけも良いので女の子の多くが惹かれるかもしれない。

響も一瞬で人を引き付けるオーラがあるけれど、駿もきっと同じなんだろう。

「響君と会って、ひよりは変わったよ。ふふ、上手く飼い馴らしてるね、響君。ひよりは新しい御主人様に従順なんだね」

響に向けた微笑みは色気を全面に出していて、妖艶という言葉が相応しいと思えた。言葉と共に、わざと挑発するような感じ。

響、挑発に乗っても良いんじゃない?

私は駿の前だと身がすくんでしまってこれ以上は何も反発出来ないから、響に助けて貰えないと抜け出せない。
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