君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
再会してから、郁人さんはずっと冷たい態度だ。あの日、私のたわいない言動であんなにも笑ってくれたのが嘘のようだった。感情表現豊かな彼はどこに行ってしまったのだろう。

「そんなに私を憎んでいるんですか?」

尋ねずにはいられなかった。

もし私が郁人さんの言うように、あの日彼に取り入るために近づいて、自分に都合よく持っていこうとしたのなら無理もないのかもれない。でも全部誤解だからつらかった。

「なぜ君を憎む?」

「え? だって……」

「たしかに君の魂胆を知ったときは苦々しい思いがしたが、憎んでなどいない」

彼はきっぱりと言い切った。

でもその言葉に少しもほっとできないくらい、凍てついた目を向けられる。

「俺は君を愛せない。ただそれだけだ」

そう口にした彼は私に背を向け、二度と振り返りはしなかった。

……憎んでいる、と言われたほうがましだったかもしれない。

私はもう関心さえ持たれていないのだ。

ただお義父さまと真紘さんを納得させるためだけの結婚をした、その相手が私だっただけ――。

彼にとって私は運命の人なんかじゃなかった。

むしろその対極にいるのだ。


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