君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
郁人さんの様子を窺いながら答えた。

相談しようと思っていたところだったし、ちょうどいい機会かもしれない。

真紘さんがいるときのほうが、郁人さんと話しやすいからだ。

「習い事か。俺は乗馬クラブに通ってるよ」

真紘さんが声を弾ませた。

「乗馬クラブですか? 楽しそうですね」

「楽しいよー。あ、でもみちるちゃんはまず英会話とかマナー講座のほうがいいかな? 兄さんに同伴していろんなところに顔を出す機会もあるだろうし、教養を深めておいたほうがいいね」

提案されてはっとした。

たしかにその通りかもしれない。

たとえ半年後に離婚が決まっていても、私には知性も品性もなく、郁人さんに相応しくない。

習い事は郁人さんの恥にならないために始めるべきだ。

「ねえ、兄さん」

真紘さんが郁人さんに話を振った。

「君が興味のある習い事をすればいい」

郁人さんは私に向かって淡々と口にした。

「はい、ありがとうございます……」

「じゃあみちるちゃん、なにをするか決まったらまた教えて。新婚さんの邪魔しちゃ悪いし、そろそろおいとまするね。ごはんおいしかった。ごちそうさま」

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