俺はずっと片想いを続けるだけ

簡単に絆されます!~グレイス

目覚めて、ここが一瞬何処なのか判りませんでした。
目の前に広がる高い天井。

凝った絵画の様な天井を見たのは初めてで、私はベッドの上で身体を回転させながら、色々な方向から天井画を眺めました。

(ここは美術館か?)

恥ずかしながら、私に文化的な教養はありません。
どちらかと言えば、体を動かす方を好みます。
大叔母様に言われたように、本も読まないし、刺繍も苦手、ピアノも巧くありません。

(こんな私を、旦那様がお好きなはずがない)

昨夜こちらに通された時は『豪華な感じ』としか思わなくて気付かなかったのですが、
明るい朝の光の中で部屋を見渡せば、とても凝った意匠のお部屋だと知りました。

特に天井の天使の絵が素敵です。
天使に手を伸ばしている人間の男性は、旦那様に似ている気がしました。

……そして、自分の胸がしくしく痛いことに気付いてしまったのです。

(平気だと思っていたのに、本当に言われて私は悲しかったんだ
きっと、夫婦の寝室は真実に愛する人との為の部屋なんだ
旦那様は仕方なく私と結婚したんだ)

昨夜も私のスケスケを見て、口を押さえられ吐きたいのを我慢されていました。

(もう判っています
『俺に愛されると思うな』
『お前を愛するつもりはない』
言っちゃってください、私は平気だから)

昨日は一日中お姉様の言葉が頭から離れなくて。
花嫁の控え室に、食べやすいようにと用意されていた、ひとくち大の軽食にも手は伸ばせなくて。

(切り換えなくっちゃ)

頭の中を食べ物の事でいっぱいにしました。
胸の辺りがしくしく痛むのは、絶対にお腹が空いているから。

きっとそうに違いない……
< 23 / 26 >

この作品をシェア

pagetop