センセイとわたしのただならぬ関係
 いや、それは無理な話だ。

 わたしは左右に大きく頭を振った。
「無理です。古文の教科書開くと、とたんに眠くなってしまって」

「古文は面白いんだけどな。恋愛ストーリーの宝庫だぞ。かなり際どい話が多いし。まあ、そういうのは授業ではできないけど」

「うー、でも、わたしには呪文としか思えない」

 先生は腕を組んで、ちょっとの間、考えて、それから言った。
「じゃあ、俺が特別レッスンしてやろうか?」
「えっ、ほんとですか」

「ああ、乗りかかった舟だ。苦手科目から得意科目にしてやるよ。期末までの週末、土日のどっちかで、出勤前なら時間作れるから」

 現役高校教師の個人レッスンなんて有難い。
 今、2年だからまだ受験は迫ってないけど、苦手を潰しておいて損はない。

「ぜひ、お願いします」
「その代わり、ビシバシ扱くぞ。文法を頭に叩き込んでやる」
「ひえっ」
「頑張れるか?」

 厳しい言葉とは裏腹に優しい眼差しで見つめられて、わたしはこっくり頷いた。

 そう。
 実は、ちょっと嬉しかった。
 またこうして、学校以外で先生と会う約束ができたことが。
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