センセイとわたしのただならぬ関係

第4章 モヤモヤの正体

 一日だけだったはずの、わたしたちのヒミツの関係はこうして、継続することになった。

 期末までの5週間、土曜か日曜の午後。
 レストラン出勤前の1時間半ほど、先生の店の近くのカフェが、わたしたちの勉強スポットになった。

 なんだかうきうきする。
 別に悪いことをしているわけではないけれど(というか、勉強だからいいことだ)、ヒミツはヒミツだ。
 こんな刺激的なシチュエーション、めったに体験できることじゃない。

「この単語の意味は?」
「うーん……」
「おいおい、中学生でも知ってる基本中の基本だぞ」
 わたしはシャーペンをくるくる回しながら、上目つかいで先生を見た。

「中学のときから、古文は捨ててたから」
「それでよく、高校受験乗り越えたな」
「受験のときはなんとか頭に詰め込んだけど。もうきれいさっぱり、跡形もなく脳内から消え去りました」
「そんなことだろうと思ってさ、実はこれ持ってきた」

そう言って、先生は語呂合わせで覚える、イラスト付きの古文単語帳をテーブルの上に出した。
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