センセイとわたしのただならぬ関係

***

「で、いったい、何があったんだ?」
 車に乗り込むとすぐ、先生はわたしに尋ねた。

「父に言われたんです。来年、18歳になったら、自分が決めた相手と結納を交わせと」

 先生は一瞬、わたしが何を言っているのかわからないという顔をした。
「えっ? 梅谷の意思に反してってこと?」

「はい。その人は父の一番の部下で、彼に会社を継がせたいんです。だから有無を言わさずそうしろと。父は会社が第一でわたしのことは二の次だから」

「もしかして、あの時、いた人?」
「あ、はい。そうです」

 先生はふーっと息をついた。

「そんな……家のために娘の結婚相手を決めるって、いつの時代の話だよ」
「時代錯誤ですよね、やっぱり」
 ああ、そうだなと、彼は頷いた。
 
 それから少しの間、彼は下を向いたまま、考え込んでいた。
 そして、ゆっくり顔を上げると静かな口調で言った。

「だが、だからと言って、逃げればいいってもんじゃないよ。とにかく、今日は家に帰りなさい。もうこんな時間だ。お母さんにすぐ帰ると連絡を入れないと」
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