まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
「子供のことを知ったら俺が苦しむと思ったか。父親と同じだと言った俺がまた同じ道をたどってしまうと一生悔やむと思ったのか」

 彼は遠くを見つめながら淡々と話し出し、私はその突然の問いかけの答えに困った。

 今、彼はどんな思いで話しているのだろう。膝の上で握る拳を見たらどう言ったらいいか分からなくなり、ただひたすら黙り込んでいた。

「京都出張が増えたころ俺はあまり家に帰らないようにしてた。でもそれは仕事が忙しかったからじゃない。ただ結に会えなかったんだ」

 突然の京都の話。急に何の話が始まったのか分からずに内心戸惑っていたら、彼は言いずらそうに唇を噛みながら頭をかいた。

「あれ以上一緒にいたら離れられなくなると思った」

 信じられなかった。

 契約期間が終わることになんの躊躇もなく、会いたいと思っているのは私ばかりだと思い込んでいた。だからそんな気持ちを聞けるとは思わず頭の整理が追い付かない。

 無意識に抱きしめたシボリが苦しそうにもぞもぞと動いているのも気づかないほどだった。

「自分で言い出した契約なのにな、終わりが近づくたびに後悔して、俺はいつの間にか君を離したくないと思うようになっていた」

< 125 / 128 >

この作品をシェア

pagetop