まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
 今日は一週間ぶりの休み。

 大きな欠伸をしながらふらふらと隣の部屋に起きていくと、珍しくオフモードの一哉さんが座っていた。

「おはよう」

 驚きのあまり何度も掛け時計の時間を確認してしまった。

「お……はようございます。お仕事は?」
「俺だってたまには休むけど」

 思い返せばここにきてから一哉さんと休みが重なったことなんてなかった気がする。

 仕事人間の彼はいつ休んでいるのかも分からないほど毎日仕事をしているし、私も旅館に行き始めてから忙しくて気にしている余裕もなかった。だから突然訪れたふたりでの休日に正直どうしたらいいか分からない。

 するとちらりと鏡に映ったぼろぼろの自分を見てぎょっとした。お風呂も入っていない、化粧も髪もそのままで汚女子のレッテルをはられかねない状況に顔が熱くなる。

 くんくん自分の体をにおって、何も言わずに慌ててお風呂場に向かった。

 あんな姿を見られたなんて恥ずかしくてたまらない。いくら忙しくしていたからって他人の前で気を抜きすぎた。それに彼だってあの隣で眠るのに、私はいつからこんな節操のない女になってしまったのだろうか。

 シャワーを浴び、鏡の前では念入りに髪を整えた。軽く化粧までして変なところはないかと何度も確認する。さっきまでのだらしなさが取り戻せるわけはないけれど、最低限の身だしなみだと鏡の自分と目を合わせる。

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